●薬の話

1.95年3月の報告書によると、医療費に占める薬剤費の割合は29.1%

  (仏 19.9, 独 17.1%  いずれも保険あり)

  国民一人当たり57000円(仏 50000、 独38000)

  高い高いといわれる医療費ではありますが、赤ちゃんから寝たきり老人まで含んだ金額でありパチンコ業の19兆円とくらべれば、決して多くはないと考えます。また、この先進国の中では安い医療費によりこの10年間日本は長寿国世界一の座を守ってきたのです。 開業している医師一人当たり私の計算では、定年までに6億5千万の収入がありますが、このうち3億を設備投資と借金返済に費やし、結局、大きな会社の部長クラスで退職した人の生涯賃金と同じ可処分所得となります。決して医師が薬をむやみに売ってお金をもうけているのではないことが理解していただけると思います。

  そもそも医師が薬でもうけているという過去の事実を作り出したのは厚生省で、当時診察料を上げる代わりに薬価差で儲けなさいという体制を作ったのです。その後、このことが騒がれるようになると、薬価差を減らした分だけ診察料を上げるという方式をとってきましたが、すでにR(リーズナブルゾーン)5%となろうとし、この中から消費税を払うのですから、実質的には薬価差はないことになります。デッドストックや管理費などを考えると少し問題となる薬価差でしょう。

  

さて、医薬分業ということがありますが、そもそも1956年の医師法改正以来、医師に与えられた薬師仮免許を廃止しようと言う動きがあります。

  医師は大学で半年ないし1年位しか薬学の勉強をしていません。薬剤師は4年間勉強しているのですから、その知識についてはどちらが豊富か容易に判断できると思います。さらに厚生省は薬学を6年教育にしようとしていますのでますます差が出来ることと思います。現在岩国では、約50%以上が分業しております。調剤薬局も約70店あります。

分業については、93年10月ソリブジン(帯状疱疹の薬)とフルオロウラシル系抗癌剤の併用により15人が死亡した事件があり、分業により薬が薬剤師により管理されていればこのような事件は起こらなかったのではないかと注目されています。

  厚生省は表向きは分業により、かかりつけの薬剤師がすべての薬を管理することにより、飲み合わせその他の薬害から患者さんを守れるであろう、そして、裏では医者が使う薬が減り(要らない薬を出していた?)、医療費が抑制できるだろうと考えていたようですが、実際には薬剤費は減らず、医者が要らない薬は出していないことを証明したことになりました。そこで今度は処方する薬を商品名でなく一般名にして、薬局で有名会社の高い薬でなく小さな会社の定価の安い薬(薬価差も大きい)を多く使えるようにしようと考えているようです。このような薬をゾロ品といいますが、ゾロを使えば1割位薬剤費を抑えられると計算しています。ゾロ品については品質の問題もあるかもしれませんので、よく考えなければなりません。

2.さて、病気の治療には@服薬 A処置 B指導(生活・食事) C教育(疾病・心理ケア)などの組み合わせが必要です。今回は薬の話ですので、服薬指導について述べてみます。

 (1)時間・回数の指示

   最近では1日3回の薬では昼に飲むのを忘れるため、1日1ないし2回の   む薬が増えています。それでも忘れる人はいますが・・。

   よく食後30分と書いてありますが、この時間でなければいけないわけで   はありません。忘れやすい人は食直後でもかまいません。

   食間服用とは食後2時間のことです。潰瘍治療薬など胃粘膜保護を目的と

   するときなどはこの時間になります。

   服用期間は指示に従ってほしいと思いますが、例えば扁桃炎で10日間抗   生剤を飲む指示にも理由があるのです。

(2)オレンジジュースとエリスロマイシン、ヨーグルトと糖衣錠、牛乳とテトラサイクリンの組み合わせは薬の効果を減らします。やはり、水で飲むの一番です。

(3)頓服は本当に必要なときに使いましょう。熱が出たからすぐ熱冷ましという人がいますが、多くはウイルスによる感染ですので、ウイルスそのものが熱に弱いのですから、むやみに熱を下げることはかえってウイルスも住み易い環境を作ることになります。できれば頭を冷やすことで凌げればと思います。ただ、狭心症の頓服などは我慢しないで使って結構です。

(4)薬の保存について:水剤は冷蔵庫で2週間まで。散剤は乾燥剤を入れた金属缶に入れると長持ちします。私はもし余ったら冷蔵庫に入れるように指導します。それから自分の薬を勝手に他人にあげないで下さい。危険です。 

(5)投与法として、散剤に砂糖を混ぜ、水を1滴たらして密状に練り、スプーンですくって与えるなど工夫する。 

3.副作用について

  主作用と副作用は表裏一体であることを知って下さい。例えば腹痛の薬にブスコパンというのがありますが、これを使うとのどが渇いたり、明かりをまぶしく感じたり、脈が速くなったりしますが、これはこの薬の持っているアトロピン作用によるもので、本来副作用というべきものではないのです。他にも狭心症や高血圧に使う薬の中には血管を拡げる作用のものがありますが、これを飲むと頭が痛くなることがあります。これは、頭の血管が拡がったために起こるもので、本来悪い作用ではないのです。従って、患者さんにその薬を飲むとどんなことが起こるかを知っておいてもらうことが必要です。問題となるのは、体質的な問題でおこる副作用です。つまり、アレルギーのある人ではショックを含め重篤な副作用が出る可能性があります。自分で合わない薬があったらメモしたものを保険証の中に入れておくと良いでしょう。元々喘息のある人に熱があるからといって、親切心からアスピリンをあげると発作を起こして死ぬこともあります。やはり医師や薬剤師に相談してから薬を飲むべきでしょう。そこまでひどくなくても、潰瘍のある人が痛み止めを飲むと潰瘍がひどくなることがあります。このような問題は2つの医療機関にかかり両方から薬をもらっているときなどに起こりやすいものです。飲んでいる薬は医師や薬剤師に見せて、飲みあわせを相談するのがよいでしょう。この問題もコピーに例が載っています。漢方なら副作用がないかというと決してそんなことはありません。先日も高血圧の患者さんが筋肉痛で芍薬甘草湯を他院でいただいて続けて飲んでいたら体重が増えて、血圧が上がりむくんできたと言ってきました。これは甘草の作用によるもので偽のアルドステロン症という状態になったための症状です。このかたは調子がよいので診察しないで薬だけ下さいといって帰っていたそうです。

4.老人の特性について

  老人の有病率は75歳以上で6割にもなります。そして、多くは複数の疾患をもち、それらは慢性です。そのため、多剤長期投与となりやすいのです。老人は加齢による機能の低下から薬物の体内蓄積が起こりやすく、副作用が出現しやすいのです。その上、多剤のため薬の相加・相乗・拮抗作用の出ることがあります。

  また、老人は薬を間違えることがあります。対策としては、なるべく少ない薬を単純なスケジュールで与えること、家族や付き添いに2分服・3分服の薬をまとめてホッチキスでとめておくなどの工夫をし服用するのを見届けるのが安全です。

 

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